こんにちは。今回は沖縄の最後の秘境とも呼ばれる大東諸島へフェリーだいとうで行ってきたので、その様子を紹介します。
東京大学には「文ニート」という言葉があります。履修の都合で東大文科二類の2年生は授業を全くなくすことができる半年間があり、その期間のことを文ニートと呼ぶわけです。私は今この文ニートをやっており、恐ろしいほど時間があるので、この乗船困難な「フェリーだいとう」に乗ることにしました。

フェリーだいとうについて
フェリーだいとうの概要
「フェリーだいとう」は、沖縄本島の那覇港と大東諸島の南大東島、北大東島を結ぶ唯一の定期貨客船です。大東海運が運航しており、島民の生活物資輸送に欠かせない存在となっています。
フェリーは10日に1便程度の頻度で運航し、那覇から大東諸島まで約15時間かけて航行します。南大東島と北大東島は隆起サンゴ礁の島で周囲が断崖絶壁のため、通常の接岸ができません。そのため、乗客や貨物の乗降は、船からクレーンで吊り上げられた「ゴンドラ(ケージ)」に乗って行われるのが最大の特徴であり、名物にもなっています。
フェリーだいとうの運賃と予約
運賃は那覇~南・北大東間の場合、大人が片道5,790円、往復11,010円です。予約は前月の20日頃から開始され、電話または窓口での受付が基本です。天候や海象によっては欠航や運航ルートの変更もあるため、最新の運航状況は必ず確認が必要です。船内には2等客室(ベッド席)や椅子席、自動販売機などがあります。
なおこども運賃(片道2900円、往復5510円)や、南北大東島間運賃(大人870円、こども440円)、さらには島発の往復運賃は安くなっていたり(大人9850円、子供4930円)、南北大東島間の島民向けの割引(大人250円、こども140円)があったりします。また障がい者運賃(こども運賃と同額)も設定されています。
大東諸島について
地理・歴史
大東諸島は沖縄本島から西に約400km離れた海上にある離島群です。人が住んでいるのは南大東島と北大東島だけですが、その周辺にある西南西小島と南西小島、沖大東島を合わせて大東諸島と呼ばれています。台風がきた時にはよく名前を聞くイメージがありますね。
この島は全体が珊瑚礁の隆起によって形成されています。周囲の標高が高く、一度低地になった後中心部はまた標高がやや高いという、典型的なサンゴ島の形です。
ちなみにこの大東諸島は沖縄本島からあまりにも離れているため、沖縄県でありながら一度も琉球王国に属したことがないそうです。
南大東村観光協会HP:https://www.minamidaito-okinawa.com

アクセス方法
この島へのアクセスは非常に難しいと言われています
飛行機を使う方法
琉球エアコミューターが那覇から南大東島、那覇から北大東島の航路を運行しています。那覇からはおよそ1時間ほどで到着します。しかしこの航路は非常に本数が短く、南大東空港行きは一日2便、北大東空港行きは一日1便しかありません。しかもプロペラ機で定員が少ないです。条件付き運航の場合が多く、欠航率も高いので、一度欠航してしまうとその後ろの飛行機が次々に満席になってしまい、島からしばらく脱出することができなくなってしまいます。この大東航路はかつて三角航路で運行されていたことで有名です。那覇ー南大東ー北大東ー那覇という形で周遊する航路で、南北大東島の間が日本一短い航空路線と言われています。しかし今は運行されていません。
フェリーだいとうを使う方法
もう一つのアクセス方法として、フェリーだいとうを使う方法があります。那覇から約15時間かけて南大東島、さらに1時間かけて北大東島へ向かいます。便によっては北大東島へ先に行く場合もあります。
この航路は公式サイトにも「気象・海象状況により変更・延期が多い」と書かれているほど欠航や出航延期が多い路線として有名です。しかもこの路線は月に3本しか運行されていません。乗船はよほど日程に余裕のある人でないと厳しいでしょう。

フェリーだいとうの乗船記
先述の通り時間はたくさんあるので、フェリーだいとうに乗って大東諸島を訪れることにしました。
乗船まで
まずは乗船の1週間前くらいに大東海運に電話し、乗船予約をします。乗船日と南大東島で下船すること、学割運賃で購入する旨を述べ、予約は完了です。
乗船当日の午前、那覇市の泊港にある大東海運の事務所で運賃を支払い、切符を発券してもらいます。ゆいレール美栄橋駅から徒歩15分ほどのところにあります。しかし他の島へ行く切符を販売するカウンターからはずいぶん離れた目立たないところにあるので、地図を確認して訪問するようにしましょう。
午前に切符を買いに来るように言われますが、乗船するのは16:30と、ずいぶん時間があるのでこの間那覇市内を観光します。切符を買う時、船内にはカップ麺の自販機しかないので食事を買ってくるように言われました。なのでその準備もします。
そして16:30に今度は那覇新港という、切符を買った那覇港からは徒歩約40分のところにある場所に集合します。近くに駅はないのでバス(本数が少ない)か徒歩で行きます。

乗船〜船内の紹介
那覇新港から自動車で乗船口まで連れて行ってもらい、乗船します。
フェリーだいとうは学割で片道4640円と安いのですが、ありがたいことに一人一つの寝台付きです。電灯の下にコンセントがあり、携帯電話などの充電ができます。スクリーン式のカーテンもついており、プライベート空間を保つことのできる設計になっています。ただし、鍵はかからないので貴重品の管理には十分気をつけましょう。

二階建ての寝台がずらっと並んでいますが、この日は旅客が少なかったためほとんど空いていました。
船内には綺麗めなトイレ、食事スペース、テレビ、座席などがあります。聞いていた通りカップ麺と飲料の自動販売機も設置されていました。また特大荷物を固定するスペースと女性専用席もありました。ただし男女ともシャワーは設置されていないので注意しましょう。

出航
出航する際にはアナウンスがあり、到着予定時刻などが案内されました。特に驚いたのは船内でのトラブル防止のため、飲酒は禁止されているという点です。船内にも飲酒禁止の表示が貼られていました。
出航してしばらくするとインターネットが全く使えなくなりました。海上なので当たり前ですが、ネットが使えないと15時間の時間潰しはなかなか大変なものです。とりあえず船内をウロウロしてみました。ちなみに船内Wi-Fiもありません!
デッキにのぼると、日差しが強く、日焼けをするにはちょうど良さそうです。ですがしばらくいると沖縄の日差しはとても暑いので耐えられなくなり船室に戻りました。船室内には喫煙室があり、おじさんたちがずっとタバコを吸って団欒していました。その後3時間ほどぼーっとしたりウロウロしたりしていたのですが、そのおじさんたちはずっと喫煙室で喋っていました。

食事
ちょうど食事に良い時間になってきたので、本島で買ってきたマグロ丼を食べます。夕方だったので半額の500円で購入しました。

就寝
次の日は朝8時ごろの入港なので、大学生的には早起きです。早めに寝ることにします。地元の人に聞いたところ、この日はかなり海が安定していたらしく、ずっとゆりかごくらいの揺れで途中で目が覚めることもありませんでした。普段は結構揺れるらしいので、酔い止めなどを持参することをおすすめします。船内では基本的に手に入りません。
フェリーだいとう入港シーン
朝7時ごろになると大きな音でアナウンスがあるので自然と目が覚めます。準備をして入港シーンを見るためデッキに上がります。南大東島はもう目の前にありますがここからが大変です。サンゴ島の特徴で島の周囲の標高が高くなっており、海に面する部分は断崖絶壁となっています。さらに海側も急斜面になっており、付近の海底が非常に深くなっています。また大東島は人口や財政規模もそこまで大きくないので、それらの断崖絶壁を切り拓いたり防波堤で囲まれた大型船の入る港を作ったりすることはできなかったようです。がっつり外洋に晒された場所へ、アンカーロープを大量に使ってフェリーだいとうをとめます。
まずは船の海側を固定するため、海面に設置された構造物にアンカーロープをかけます。このアンカーロープをかけるために小型船が出航してくるのですが、大波にも耐えられるように港が比較的高いところにあるため、クレーンで船を下ろします。かけ終わったらまたクレーンで小型船を吊り上げます。

海側が固定できたら次は陸側を固定していきます。陸までの距離が遠いので、ロープを渡す際にはアンカーロープ発射装置を使います。
前後で3本ずつアンカーロープをかけて固定完了です。
クレーン上陸
さあ船が停止したのでいよいよ上陸です。先述の通り港は高いところにある上、揺れなども大きいため、タラップをかける方法は取られていません。そこで行われているのがこのクレーン上陸です。人は鉄製のゴンドラに乗り、クレーンで吊るされて上陸します。旅客3人とニワトリ3羽が同じゴンドラにのせられ、吊るされます。かなりのスピードで動かされるので遠心力で結構傾きますが、無事南大東島に上陸することができました。
貨物の扱い
旅客を上陸させたら次は貨物を順番に下ろしていきます。この際も全てクレーンを使用します。日用品や郵便物など、多くのものがこのフェリーだいとうで運ばれているらしく、この船の役割は計り知れません。おそらくこの貨物の輸送が多いために旅客運賃は非常に安く設定されているのでしょう。

帰りの乗船
この船は貨物を下ろし終わったあと、北大東島を周り、また南大東島に戻ってきます。そして二日後の夕方に再度北大東島を経由し、那覇に向けて出発します。1回目の寄港で荷物を下ろし、2回目の寄港で荷物を積むという算段のようです。
行きに乗っていたメンバーと帰りに乗っていたメンバーがほとんど同じだったので、帰りは皆仲良くなり、一緒に夕飯を食べたり、夜まで団欒したりしました。旅は不思議な出会いを与えてくれます。
朝は沖縄本島に近づいたところで一緒に朝日を見て、下船後も皆で本島で有名な朝ごはんを食べに行ったりと、良い旅行になりました。

南大東島での観光については以下の記事(準備中)をご覧ください。
ご覧いただきありがとうございました。