北海道の雄大な大地が育んだ、世界で唯一の競馬。それが「ばんえい競馬」です。馬体重1トンを超える巨大な輓馬(ばんば)が、騎手とソリを曳き、砂の障害を乗り越える姿は、まさに「鉄蹄の轟き」という表現がぴったりです。その舞台となるのは、北海道・帯広市にあるばんえい十勝。単なる地方競馬という枠を超え、独自の文化と歴史を持つばんえい競馬の魅力を、実際に日本縦断中に帯広競馬場を訪ればんえい競馬を観た東大生が当日の旅行記とともに紹介します。
1.他とは一線を画す、ばんえい競馬の魅力
ばんえい競馬は、一般的な競馬とはルールも迫力も大きく異なります。その魅力を紐解いていきましょう。
1-1. 重量との戦い:息をのむパワーと持久力
ばんえい競馬の最大の特徴は、騎手とともに鉄製のソリを曳いて競う点です。そのソリには、レースの距離や馬の能力に応じて数百キロから1トンを超える重量が積まれます。サラブレッドのようなスピードだけでなく、強靭なパワーとそれを支える持久力、そして騎手との絶妙なコンビネーションが勝敗を左右します。
ゴール前での激しい駆け引きはもちろん、重量に耐えながら障害を乗り越える馬たちの力強い姿は、観る者の魂を揺さぶります。その迫力は、競馬ファンのみならず、多くの人々を魅了してやみません。
1-2. 人馬一体のドラマ:騎手と輓馬の信頼関係
ばんえい競馬は、単に馬が走る速さを競うだけではありません。騎手は、馬の呼吸やリズムを感じ取り、的確な指示を与えることで、馬の能力を最大限に引き出します。長年の経験と深い愛情によって築かれる、騎手と輓馬の信頼関係は、レースの行方を大きく左右する要素の一つです。
障害の手前での駆け引き、ソリの曳き方の調整、そして最後のスパート。その一瞬一瞬に、人馬の絆が凝縮されています。勝利を手にした時の騎手と輓馬が見せる表情は、言葉を超えた感動を与えてくれます。
1-3. 北海道の歴史と文化:開拓の記憶を受け継ぐ
ばんえい競馬は、北海道の開拓時代に、農耕馬の力比べとして始まったとされています。厳しい自然の中で、人々の生活を支えた馬たちの力強さを競い合う文化が、形を変えながら現代に受け継がれてきたのです。
ばんえい十勝の競馬場には、その歴史を伝える資料館も併設されており、競馬観戦と合わせて北海道の歴史や文化に触れることができます。単なるエンターテイメントではなく、地域の歴史と深く結びついている点も、ばんえい競馬の大きな魅力と言えるでしょう。
2.ばんえい競馬をより深く楽しむための基礎知識
ばんえい競馬を初めて観戦する方、もっと深く楽しみたい方のために、基本的な知識をご紹介します。
2-1. レースの流れ:重量、障害、そしてゴール
ばんえい競馬のレースは、一般的に以下の流れで進行します。
- スタート: 全馬一斉にスタート地点からソリを曳き始めます。
- 第一障害: レースの中間地点付近に設けられた、砂でできた山状の障害です。馬たちは、ここで一旦速度を落とし、力強く障害を乗り越えます。騎手の腕の見せ所でもあります。
- 第二障害: ゴール手前にある、第一障害よりも急な障害です。ここで脚が止まってしまう馬も多く、レースの最大の難所と言えます。
- 直線: 第二障害を乗り越えた後、ゴールまでの直線コースを駆け抜けます。騎手は最後の力を振り絞り、馬を鼓舞します。
- ゴール: ソリの先端が決勝線を通過した順に順位が確定します。
レースの距離は一般的に200mです。
2-2. 馬の種類:たくましい輓馬たち
ばんえい競馬に出走する馬は、「ばんえい馬」と呼ばれる、体重が800kgから1トンを超える大型の馬です。ペルシュロン、ブルトン、ベルジャンなどの大型馬の交配種で、サラブレッドとは全く異なる魅力を持っています。
一頭一頭の個性も豊かで、得意な重量、得意な馬場状態、そして騎手との相性など、様々な要素がレースの結果に影響を与えます。
2-3. 馬券の種類:戦略的な予想の楽しみ
ばんえい競馬の馬券は、単勝、複勝、ワイド、馬複、馬単、三連複、三連単など、一般的な競馬と同様のものが販売されています。
重量や障害の克服力、騎手とのコンビネーション、過去のレース成績、そして馬場状態など、様々な要素を考慮して予想を組み立てるのが、ばんえい競馬の馬券の醍醐味です。高配当が出ることも珍しくなく、一攫千金を夢見るファンも少なくありません。
また個人協賛レースも受け付けており、寄付をすることによってレースのサブタイトルをつけることができます。
3.帯広競馬場(ばんえい十勝)へ行こう!
ばんえい競馬の迫力を肌で感じるには、帯広競馬場(ばんえい十勝)への来場が一番です。
3-1. 競馬場の雰囲気:熱気と興奮を体感
競馬場では、レースの臨場感を間近で味わうことができます。鉄蹄の轟き、騎手の怒号、そして観客の歓声。そのすべてが一体となり、独特の熱気と興奮を生み出しています。
グルメやイベントも充実しており、一日中楽しむことができます。家族連れや友人同士での来場もおすすめです。
3-2. 観戦のポイント:障害での攻防を見逃すな
ばんえい競馬観戦の最大のポイントは、やはり障害での攻防です。各馬がどのように障害を乗り越えるのか、騎手がどのような指示を出すのか、息をのむ瞬間が繰り広げられます。
双眼鏡を持参したり、大型ビジョンで騎手の表情などを確認したりするのも、観戦をより深く楽しむためのコツです。
3-3. アクセス情報:帯広への旅の計画
帯広競馬場(ばんえい十勝)へのアクセスは、以下の通りです。
- 車: 帯広市内から約10分。無料駐車場が完備されています。
- 公共交通機関: JR帯広駅からタクシーで約10分、またはバスを利用します。
帯広市内には、温泉やグルメなど、観光スポットも豊富です。ばんえい競馬観戦と合わせて、帯広の魅力を満喫する旅を計画してみてはいかがでしょうか。
4.最長片道切符の旅4日目〜旅の記録in帯広〜
この日は朝に和商市場で海鮮丼を食べてから釧路駅を出発し、特急おおぞら号(2360円)に乗って帯広駅に到着しました。

12:56 帯広駅到着
十勝地サイダー 芽室ゴールデンアップル(350円)を購入
帯広市の隣に位置する芽室町でとれたりんごが使われているらしいです。
13:30 バスで帯広競馬場へ向かう(200円)
13:50 帯広競馬場に到着
この日は土曜日ということもあり、大変な混雑でした。
帯広競馬場には「とかちむら」という観光交流拠点が併設されており、競馬以外にもグルメや買い物を楽しむことができます。さらにこの日は競馬場の前でイベントが開催されていました。
この日の第一レースは14:35スタートなので先におそめの昼食を食べることにしました。

14:00 豚丼を食べる
とかちむらの中にある「ぶた丼きくちや」さんで絶品ぶた丼(1000円)を注文。
非常に美味しかったです。山椒がよく合います。

14:20 馬の資料館を見学
入場無料の馬の資料館でばんえい競馬の概要や歴史を学びます。

14:30 レース観戦に向かう
馬の資料館はそこまで大きな施設ではないのですぐに見学し終わりました。
次は競馬場に入場します。ちなみに入場料はかかりませんでした。スタンド席もあるのですがその手前にエキサイティングゾーンと呼ばれる間近で見られるスペースがあります。通常の競馬とは違いばんえい競馬のコースにはカーブがなく、馬が走るスピードも遅いので、スタート位置で観戦を開始し馬の動きに合わせてゴールまで移動するという見方が主流とのこと。
14:35 レース開始
レースが始まりました。通常の競馬では考えられないほどゆっくりと進むので驚きました。しかもコース上にある坂道の手前で馬が停止します。ばんえい競馬は馬が非常に疲れるためレース中のどこで停止してどのくらい休憩するのかが重要らしいのですが、初見の私にとっては新鮮な光景です。
一つ目の坂道はあっさりと通り過ぎた馬でも、次の坂道で足を滑らせてしまいなかなか上りきることができなかったり、ゴールに辿り着けそうになかったりと、一つのレースに様々なドラマがありました。観客皆で「がんばれ〜」と応援します。

14:40 イベント
荒れたレース場を整地したりするため、次のレースは約40分後です。
次のレースも見るのでしばらく待ちます。
その日ちょうど開催されていたイベントで北海道伝統のソーラン節が披露されていたので観覧しました。
15:10 第二レース
第二レースはスタンドから観戦しました
15:20 再び待ち時間
もう1レース見ようと思うので再び待ちます。
とかちむらにあるお店を巡ったり、ベンチで座ったりします。
15:45 第三レース
16:00 出発
次は徒歩で六花亭帯広本店に向かいます。
16:20 六花亭帯広本店
北海道でしか食べられないのが六花亭名物のマルセイバターサンドのアイス版「マルセイアイスサンド(260円)」です。数ある六花亭の中でも4店舗でしか食べられない幻の味です。ぜひ帯広競馬場の帰りに食べてみてください。

17:05 帯広駅出発
一駅だけ根室本線に乗ります。
17:08 柏林台駅到着、徒歩
17:30 天然温泉やよい乃湯
天然温泉やよいの湯(490円)で休憩します。この温泉でしばらくリモートワークをして今日の旅費を相殺します。

この後は帯広のネットカフェ「ファンタイム帯広柏林台店」で宿泊しました。大通り側にある入り口が真っ暗だったので閉店を疑い焦りましたが、裏側に明るい入り口があり安心しました。ここで泊まるところがなくなったら暗い帯広のまちを夜な夜な彷徨うことになってしまいますからね・・・。
5.ばんえい競馬の未来:伝統を守り、新たな魅力を発信
近年、地方競馬を取り巻く環境は厳しいものがありますが、ばんえい競馬は、その魅力と地域に根ざした活動によって、多くのファンに支えられています。
ばんえい十勝では、インターネット中継やSNSを活用した情報発信、初心者向けのガイドツアーの実施など、新たなファン層の開拓にも積極的に取り組んでいます。
北海道の開拓の歴史とともに歩んできたばんえい競馬は、これからもその伝統を守りながら、新たな魅力を発信し続けるでしょう。
まとめ
「帯広 ばんえい競馬」は、単なる競馬という枠を超えた、北海道の歴史と文化が息づくエンターテイメントです。重量との戦い、人馬一体のドラマ、そして鉄蹄の轟き。そのすべてが、観る者の心を揺さぶります。
ぜひ一度、帯広競馬場(ばんえい十勝)に足を運び、その迫力を肌で感じてみてください。きっと、忘れられない感動と出会えるはずです。