財政破綻のまち夕張の魅力を再発見する観光。日本縦断旅行記

北海道

北海道の中央部に位置する夕張市。かつては石炭産業で栄え、「黒いダイヤ」の街として名を馳せました。しかし、時代の流れとともに炭鉱は閉山し、2007年には全国初の財政破綻を経験。多くの人々が街を離れ、厳しい状況が続きました。

しかし、夕張は決して過去の遺産に埋もれた街ではありません。財政再建という困難な道のりを歩みながら、残された豊かな自然、歴史的な遺産、そして何よりもそこに住む人々の温かい想いが、新たな観光の魅力を生み出しています。

本記事では、「夕張 観光」をキーワードに、夕張の知られざる魅力と、訪れるべき観光スポットを、実際に日本縦断中に夕張市を訪れた東大生ライターが徹底的にご紹介します。厳しい時代を乗り越え、力強く歩む夕張の今を知れば、きっとあなたもこの街を訪れたくなるはずです。

逆境を乗り越えて:夕張の歴史と「財政破綻」

夕張の歴史は、明治時代に始まった石炭採掘とともに発展しました。最盛期には10万人を超える人々が暮らし、日本のエネルギー産業を支える重要な役割を担っていました。しかし、1970年代以降のエネルギー転換や炭鉱の閉山により、人口は激減。経済は衰退の一途を辿りました。

そして2007年、夕張市は全国で初めてとなる財政破綻を宣告しました。累積赤字は353億円に達し、市民生活にも大きな影響を与えました。この出来事は、日本の地方都市が抱える課題を象徴する出来事として、全国的に大きな注目を集めました。

しかし、夕張はそこで立ち止まりませんでした。市民一丸となって財政再建に取り組み、歳出削減や新たな産業の創出に力を注いできました。その結果、近年では少しずつではありますが、新たな活気が生まれつつあります。この歴史を知ることは、夕張の観光をより深く理解する上で重要な要素となります。

夕張観光の見どころ:歴史と自然が織りなす魅力

財政破綻という困難を乗り越えながら、夕張は独自の観光資源を磨き上げてきました。ここでは、夕張を訪れたら絶対に見ておきたい観光スポットをご紹介します。

夕張市石炭博物館

かつて日本のエネルギーを支えた夕張の石炭産業の歴史を今に伝える博物館です。地下深く掘られた模擬坑道は、当時の過酷な労働環境をリアルに体感できる貴重な展示です。炭鉱で使用された機械や道具、人々の生活に関する資料など、豊富な展示を通して夕張の歴史を深く学ぶことができます。財政難により一時閉館の危機に瀕しましたが、市民や関係者の努力により再開され、夕張の歴史を語り継ぐ重要な役割を果たしています。

夕張鹿鳴館

明治時代に建てられた木造洋館で、国の重要文化財に指定されています。かつては炭鉱会社の迎賓館として使用され、皇族や国内外の要人も訪れた歴史的な建造物です。美しい装飾や当時の調度品が保存されており、明治時代の華やかな雰囲気を今に伝えています。庭園も美しく、四季折々の自然を楽しむことができます。なお現在は閉館しています。

夕張リゾート(マウントレースイ)

夕張の豊かな自然を満喫できるリゾート施設です。冬はスキーやスノーボードなどのアクティビティを楽しむことができます。ホテルマウントレースイからは、夕張の山々を一望できる絶景が広がります。

夕張滝の上公園

夕張川の渓谷に位置する自然豊かな公園です。大小さまざまな滝や奇岩が織りなす景観は圧巻で、四季折々の美しい自然を満喫できます。特に紅葉の時期は、山々が鮮やかに色づき、多くの観光客が訪れます。園内には遊歩道が整備されており、ハイキングや森林浴を楽しむことができます。

道の駅 夕張メロード

夕張市の観光拠点として新夕張駅前に作られた道の駅です。地元の特産品やお土産を販売しており、夕張の「今」を感じることができます。夏はメロンが盛んに販売されています。厳しい状況の中でも、地元の人々が頑張って営業しており、温かい雰囲気に触れることができます。

夕張グルメ:炭鉱とともに育まれた食文化

かつて炭鉱で働く人々を支えた夕張の食文化は、力強く、そして温かいものでした。

夕張カレーそば

夕張のご当地グルメとして知られるのが「夕張カレーそば」です。和風出汁とスパイシーなカレールーが絶妙に絡み合ったスープに、コシのあるそばがよく合います。炭鉱で働く人々の体を温めたソウルフードとして、地元の人々に愛されています。市内には、それぞれに個性のあるカレーそばを提供するお店がいくつかあります。

夕張メロン

夕張といえば、やはり「夕張メロン」は外せません。厳しい気候と肥沃な大地で育まれた夕張メロンは、芳醇な香りととろけるような甘さが特徴です。旬の時期には、市内の 道の駅などで購入できるほか、メロンを使ったスイーツなども楽しめます。財政難の中でも、夕張メロンは品質を守り続け、夕張のブランドイメージを支える重要な役割を果たしています。

〜最長片道切符の旅5日目〜旅の記録in夕張

新得駅から特急列車に乗って新夕張駅にやってきました。石勝線の新得から新夕張までの区間は特急列車しか走っていないため、その区間だけを利用する人は特例として特急券なしで特急列車に乗ることができます

13:00 新夕張駅到着
新夕張駅の属する石勝線は1981年に開通した比較的新しい路線です。駅舎はコンクリート造りでとても重厚感があります。

13:10 道の駅夕張メロード
駅前の道の駅で休憩します。道の駅の要件として、24時間使用できるトイレが設置されている必要があるのですが、地震でトイレが壊れてしまい、お金がないので修復できず駅のトイレを解放してもらっているという噂があります。
ここの道の駅で夕張市に向かうバスを待ちます。メロンアイス200円を購入。

14:40 バス出発
夕鉄バスで夕張市街の方面へ向かいます。往復運賃よりもフリー切符の価格の方が安いのでそちらを購入(1200円)。このバスの自動アナウンスの声は夕張市出身の歌手大橋純子さんとザ・リリーズの2人が担当しています。夕張についての話や幼い頃の思い出話などがアナウンスに乗せて紹介されます。「次は小学校です。昔は炭鉱の事故で授業中にサイレンが聞こえたりしました」といったアナウンスを、22キロ約50分の道のりの中で楽しむことができます。

15:30 夕張市炭鉱博物館 到着
この施設では夕張市が財政破綻したことについての紹介や、炭鉱での作業などが紹介されています。入館料は720円。特に印象的なのが以下のような掲示。自虐ネタがたくさん。

面白い看板
圧倒的な廃墟感
面白い看板
金属散乱・・・侵入したらパンクの危険

実際の炭鉱を再現したトンネルなど、迫力のある展示で楽しかったです。現在は入れるようになったのですが、この時は模擬坑道は火災復旧工事のため閉鎖されていました。

炭鉱の展示

17:20 バス出発

18:30 新夕張駅到着
この日はたまたま新夕張駅の前で盆踊り大会が行われていました。地元の方が焼いた焼き鳥(100円)を購入し、盆踊りの風景を眺めます。いい太鼓の音が響きますが、人口減少のためか、踊りの輪を作ることは難しいようでした。

盆踊り

ここからまた普通列車にのり、追分・南千歳を経由し、最長片道切符を乗り越して新千歳空港に向かいます。

20:00 新千歳空港到着
空港にはきましたが、飛行機に乗るわけではありません。空港併設の温泉で一晩滞在します。

夕張へのアクセスと移動手段

夕張へのアクセスは、主に鉄道または車となります。

鉄道

JR石勝線夕張支線が夕張駅まで運行していましたが、2019年4月に廃止されました。現在、鉄道での直接アクセスはできません。新夕張駅まで鉄道で行き、そこから夕鉄バスに乗り換えて市内中心部へ向かいます。

鉄道

札幌市街から道東自動車道を経由し、夕張ICで降りて約1時間です。夕張市内の移動には、車が便利です。

夕張観光の注意点

夕張を観光する際には、以下の点に注意しておくと良いでしょう。

  • 公共交通機関: 市内の公共交通機関はバスが中心ですが、本数は限られています。効率よく観光するには、レンタカーの利用がおすすめです。
  • 施設の休館日: 観光施設によっては、季節や曜日によって休館日や営業時間が異なる場合があります。事前に各施設の公式サイトなどで確認しておきましょう。
  • 宿泊施設: 夕張市内の宿泊施設は、以前に比べて減少しています。特に観光シーズン中は、早めの予約をおすすめします。
  • 自然の中での活動: 滝の上公園など、自然の中で活動する際は、足元に注意し、適切な服装と装備で臨みましょう。

まとめ:夕張で触れる、過去と未来への想い

夕張は、かつての栄光と財政破綻という苦難の歴史を背負いながらも、力強く生きる人々のエネルギーに満ちた街です。石炭産業の遺産は、当時の人々の暮らしや技術を今に伝え、豊かな自然は訪れる人々の心を癒します。そして、何よりもそこで暮らす人々の温かい想いが、夕張の新たな魅力を形作っています。

廃墟

夕張を訪れることは、単なる観光ではありません。過去の歴史を学び、現在の厳しい状況を知り、それでも前を向いて歩む人々の姿に触れる旅です。この街でしか味わえない感動と発見が、きっとあなたを待っています。ぜひ、夕張を訪れ、その魅力を肌で感じてみてください。

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